CHAPTER 3/CHAPTER 4
振り返りコーナー
CHAPTER 3
コンセプトアート by Gigi DG
Chapter 3は…他のチャプターと同じく、元のアイデアは2016年ごろに考えはじめました。当初のコンセプトは、「通常のチャプターとは毛色の違う、小休止のようなチャプターにして、『マリオパーティ』みたいなヘンテコなボードゲームにしよう!メタトンみたいなテレビのキャラクターを登場させよう!」というものでした。『ゴースト トリック』をプレイした記憶がまだ鮮明に残っていて、これに採用されていた3Dの表現がとても好きだったので、同じような魅力を持った3Dのキャラクターを登場させたいと思いました。当時僕はちょうどKinectを買ったばかりで、モーションキャプチャをいろいろ試していました。そのときに、「MikuMikuDance」というソフトと組み合わせたら、『王様物語』の「TVランチ」みたいな3Dの踊るヘンテコテレビキャラを作れるかもしれない、なんてことを考えていました。
「TVワールド」の曲を作曲したのは、2015年のことです。メタトン戦の曲のプロジェクトファイルをベースに使って、もっと年月がたってから、「プリティショップ」と「楽屋へ ようこそ」のテーマを付け加えてアレンジしました。
この曲については、じつは2018年に、まったく違ったコンセプトを作りはじめていました。Chapter 3内で流れる他の曲たちのモチーフに焦点を当てたものだったんですが…複数の友人に聴かせてみたら、「うん…まあ…いいんじゃない?」みたいな反応で…だから僕も、「うん…そっか…わかった…元に戻すね…」となった経緯があります。
(注:このボツ曲は未完成なので、あまり気にしないでください)
テナを最初に描いたのは、2017年でした。それより前は、彼の名前は「ミスター・TVガイ」でした。
コンセプトアート by トビー
当初は、ランサーなどのキャラデザをしてくれたKanotynesに頼んで3Dにしてもらおうとしたんですが、当時のファイルはもう残っていないと思います。
最終的には、開発チームのGigiが僕のコンセプトアートをベースにターンアラウンドを描いてくれて、それをもとに、開発サポートメンバーのPixelatedCrownが3Dモデルを制作してくれました。
コンセプトアート by Gigi DG
テナのダイアログに登場する「ワードアート」は、デザイナーのAudrey Wanerがデザインして、『UNDERTALE』からおなじみのEverdraedがアニメーションをつけてくれました。「ワードアートで会話するキャラクター」というコンセプトは、『Pogo』というコミックに登場するP.T. Bridgeportというキャラクターに着想を得ています。
ちなみに、Chapter 3にはこのテナの「ワードアート」を始めとするいろいろなビジュアルコンテンツが登場しますが、日本語版は、256graphとSatoshi Maruyama氏が、テキストをグラフィックスにデザインしてくれました。
コンセプトアート by Gigi DG
テレビをテーマにしたダジャレがあちこちに書き込まれている。
ワードアートのグラフィックス制作には時間がかかりましたが、それほど大きな難所ではありませんでした。むしろ、このチャプターで難所と呼ぶべきものがあったとしたら、それはゲームプレイでした。
コンセプトアート by Gigi DG
テナの「パーク」については、複数のアイデアを何度も試してはボツにするプロセスを繰り返しました。当初は『ガンスターヒーローズ』に登場する「ブラック」の「スゴロク要塞」や、『マリオパーティ』みたいなものをイメージしていたんですが…作っているうちに、それだと非効率的なばかりか、チャプター中にゲーム内を探索する要素がなくなってしまうことに気づいたんです。それで今度は、『スーパーマリオブラザーズ3』風のフィールドにゼルダ風のマップをいくつも用意することにしたんですが…最終的には、1つの大きなマップに全部をまとめてしまうのがいちばんいいという結論にいたりました。
ミニゲームを作らないといけなかったわけですが、この作業がどれだけ大変で、どれだけディレクションが必要か、正直甘く見ていました。最終的にできあがったものはとても楽しく仕上がったと思いますが、こんなに大変で時間もかかるとわかっていたら、もう少し控えめなアイデアを出していたと思います。
Chapter 3は複数の異なる要素(ミニゲーム、パーク、シーン)でできていて、それぞれを別々に制作していたので、ほぼ全部を実際に組み合わせてみるまで、ゲームのテンポを見極めるのがとても難しかったです。そして、組み合わせてみて初めて、テンポに問題があることがわかりました。
まだ何も制作していない段階では、こんな構成を予定していました。
- パーク1(砂漠のパーク)
- お料理ゲーム
- パーク2(島のパーク)
- 音ゲー
- パーク3(街のパーク)
- スージラ&カウボーイ
- パーク4(テナがゲームを操作)
- TVワールド
当時の僕は、各パークはもっとずっと短時間でクリアできるものと踏んでいて、街のパークだけが他より大きくて、街の半分につき1つずつミニゲームを設けるつもりでいました。この2つのミニゲームをクリアすると「TVタワー」への道が開けて、最終的にパーク4へと続くシークエンスが発生する予定でした。
(この当時のコンセプトにはまだ、Sランクルームはありませんでした)
そして、Chapter 3の大半をプログラミングしおわった時点で考えた構成は、こんな感じです。
- パーク1(ゼ〇ダ風)
- お料理ゲーム
- 楽屋1
- Sランクルーム1
- パーク2(ゼ〇ダ風)
- 音ゲー
- 楽屋2
- Sランクルーム2
- パーク3(ゼ〇ダ風。改造されて、わざと短くなっている)
- テナをだましてパーク3を中断
- 楽屋3
- Sランクルーム3
- ステージ裏エリア
- パーク3その2
- スージラ
- パーク4
- TVワールド
そう、パークは全部で4つ作ってたんです!でも、通常の『DELTARUNE』らしいゲームプレイがない部分が長くなりすぎたので、パーク3はできるだけ短くしようとしました。
それで、パーク3が半分終わるごとにフィールドエリアを追加することになって、それが「ステージ裏エリア」でした。木の板でできたエリアで、ステルス機能を多用して、当初はここでルールノー・カァドーと戦う予定でした。
ルールノーを倒すとコントローラーが手に入って、このパークをエルニーナとしてプレイできるんですが、エルニーナが泣いて嵐が起きて、残りのパーク3をスキップできるキーカードが手に入る、という展開でした。が…
…息抜きできるようにと追加したこのステージ裏エリアのせいで、Chapter 3全体がさらに間延びしてしまいました。このバージョンを何人かの友人にプレイしてもらったら、みんなパーク2が終わったあたりからだんだん飽きはじめてしまって、これはカットしないとダメだと気づいたんです。
最終的に、Chapter 3の構成はこうなりました。
- パーク1(ゼ〇ダ風)
- お料理ゲーム
- 楽屋1
- Sランクルーム1
- パーク2(ゼ〇ダ風)
- 音ゲー
- 楽屋2
- Sランクルーム2
- TVパズル
- パーク4(パーク3はカット)
- TVワールド+ステージ裏エリアの特におもしろい部分(ステルス機能とか)
- Sランクルーム3
最終的にパーク3はカットになって、その名残がSランクルームに残りました(このほうがいいでしょう?)。スージラゲームはオプションになって、ステージ裏エリアの楽しい部分はTVワールドに吸収されました。
人によっては、「どんな形であれ、やれることが多いほうがいい」というご意見もあると思います。でも…全部のチャプターを1つのゲーム体験として見た場合、テンポが悪いチャプターが含まれている状態は、どうしても避けたいものです。特にChapter 3は、僕の当初の予測どおり、プレイヤーの好き嫌いがはっきり分かれる結果になったので。
正直僕は、このチャプターは一部の人に絶賛されたとしても、プレイヤーの50%には不評になるだろうと思っていました。でも実際は、大半のみなさんが楽しんでくれたようで、今はホッとしています。
「とにかく、気に入ってくれる人がいてよかった!」…そんな気持ちです。
CHAPTER 4
Chapter 4の制作は、Chapter 3と比べてずっとラクでした!
コンセプトアート by Gigi DG
とはいえ、3ほどではないにしろ、難航した箇所もいくつかあります。
当初、壁を登っているときの動きは通常のフィールドを移動するときと同じで、ただグラフィックスが登っている姿に変わるだけでした。でも実際作ってみたらどうもピリッとしなくて、壁上りのシステムを自分でプログラミングしました。僕がプログラミングした数少ない要素の1つなので、ここで言っておきます!
もう1つ、制作中に変更した箇所は、「闇の聖域」のレイアウトです。当初僕は、1本道ではない、複数のルートが交差する巨大なダンジョンのようなエリアにしたいと思っていました。『ゼルダの伝説』みたいなイメージです。でも、1本道ではない構成のレイアウトで1本道のストーリーのイベントを次々に発生させるのは難しくて…そのせいで「じいさん」の存在意義がすっかり薄れてしまいました。そんなわけで、他の要素と同じく、エリアのレイアウトも1本道になりました(笑)
作るのに特に骨が折れた部分を挙げるなら…ノエルの家です。この部分で初登場する特別な機能を用意していたので、それが台なしになるような作りにはしたくなかったんです…
僕が最初に考えていたコンセプトは、いろんなヘンテコなパーツを組み合わせて、いわゆる「ピタゴラ装置」を作る、というものでした。たとえば、「おやつ発射マシン」でおやつをバスルームに飛ばすと、おなかを空かせたアズゴアがスージィとノエルのあいだに座りにくる…みたいな。
でも、あまりうまくいかなかったので、今度は家の中でおもちゃの電車を走らせて、これを使ってパズルを作ろうとしました。
あまりに難航したので、友だちのAndrew Hussieに何かいいアイデアはないか相談したりもしました。
だいぶバカバカしいかもしれないアイデアを出すけど、とりあえず最後まで聞いて…で、そっから改めて考えよう。
テーブルの真ん中にあるのはおやつをキャッチするスヌーピーじゃなくて、デカいマコーレー・カルキンの胸像、っていうのはどうだろう。あの、みんなが知ってる、叫んでる顔のやつね。
もちろん、マコーレー・カルキンじゃなくてよくて、世界観に合ったどんなキャラでもいい。ひとまず、パピルスってことにしようか。
ただ、この胸像のデフォルトポーズはほっぺたに両手を当ててなくて、右手と左手は胸像から切り離された、家の中の別の場所にある。先へ進むには胸像を本来の姿に完成させないといけなくて、そうしないとしょうもないことが起きる。両手がない胸像は何度もひっくり返ってテーブルから落ちて、家の中の物をブッ壊す。だから、石の両手で左右から支えないといけない。
なぜ胸像がひっくり返るのか
これは、パズルを成立させるために繰り返し発生させる必要がある、重要なイベント。幸い、誰が見てもちょうどいいものがある。答えはこのシーンに含まれてる。アズゴアがバスルームを掃除してるね。このパズルが発生したときはシャワーの掃除に取りかかっているところで(アズゴアの姿が見えるように、シャワーカーテンは外す必要あり)、床が滑りやすくてアズゴアが何度も尻モチをつくせいで、家が揺れる。アズゴアがただおっちょこちょいで何度も何度もうっかり転びつづけるのかは、要検討。クリスが排気口の中で紙袋をつぶしてデカい音を立てて驚かす、とかもアリ?とにかく、必要なときに何度も発生するイベント。
胸像がひっくり返るとどうなるか
ひっくり返って床に落ちるたびに、制御不能なボウリングの球みたいに転がりはじめて、クッキーのパズルを解くのに必要なものが壊れる。まずは右の方へ転がっていって、プレイヤーが右手を見つけて本来の場所へ押し込むまで、これが繰り返される。
でも結局、ここではストーリーと雰囲気を楽しんでもらうのがいちばんだと気づいて、最初から全部作り直しました。結果、とてもいいものができたと思います。
Chapter 4は、プレイしてくれた人のほぼ全員が気に入ってくれたように思います!
コンセプトアート by トビー
(ちなみに、「正義の鉄槌」も2016年の最初に作りはじめた曲です。最終的なアレンジもなかなかいいですが、7年も放置していたので、初期のピアノラフバージョンのほうが、僕の記憶には残っています)
開発チームメンバーのご紹介
開発チームの誰が何を担当してくれたのか、ゲーム内のクレジットだけではしっかりご紹介できていない気がするので、メインチームのメンバーを紹介させてください。
Chapter 2あたりから参加しているメンバー
Sarah - Chapter 3と4のほとんどのカットシーンのプログラミング、ローカライズの実装、パッチ対応、各プラットフォーム版の制作を担当し、テストや取りまとめ全般の補佐もやってくれています。それから、ノエルの家のシークエンスを3回も作り直してくれました。ときどきマンガ日記を描いていて、リサイクルした生ゴミで植物の水栽培をするのが趣味。スパムトンポップコーンの容器でアボカドを育てました。
ひとこと「Chapter 4で『おやつプレート』が出てくるシーンをプログラミングするたびに、『チーズのせクラッカー食べたい』って思ってました」
Fred - Chapter 3のパークと、Chapter 3と4のフィールド上の大半の部屋をプログラミングしてくれました。好きな食べものはタコスで、ゲーム内のテキストに書こうとしたほど。『LOVE』というゲームの制作者。
Jean - ボスと敵のロジックのプログラミングと、すべての「こうどう」の制作を担当。ルールノー、ラニーノ、エルニーナの攻撃も全部制作してくれました。『Death's Gambit』というゲームの制作に参加。
Taxi - 音ゲーパートをまとめて、その他複雑なビジュアルシークエンス(予言のガラスに落ちるクリス、タイタンに突撃するスージィとクリスなど)の制作も担当してくれました。一部の攻撃(ナイトの星攻撃、ボックスをカットする攻撃、シャッタアの攻撃など)も担当。『Moment to Midnight』というプロジェクトを制作。
テミー - 別名、テム。基本的にすべてのグラフィックスを描いてくれました。一時期、ケーキやパン作りにドハマリしてました。
トビー - なんかやりました。
Chapter 3から参加しているメンバー
Alex - いくつもの弾幕パターンと、スージラミニゲームのプログラミングを担当。タイタンの攻撃全部と、ナイトの回転スラッシュや最終攻撃も作ってくれました。
PureQuestion - いくつもの弾幕パターン(ジャックシュタインの攻撃や大半のザコ敵を含む)をプログラミングしてくれました。Alexといっしょに『Star of Providence』というゲームを制作。
Chapter 4から参加しているメンバー
Enjl - Chapter 4のタイタンタワーと、フィールド上のいくつかの部屋を担当。Switch 2専用コンテンツ全部と、「プルーイ」もプログラミングしてくれました。今はChapter 5のフィールドのメインプログラマーです。
ひとこと「Chapter 4の開発でいちばん楽しかったのは、開発中、『ネコの二刀流』ができたことです。願わくば、リアルでも毎日、朝から晩までやりたいです」
Joost - Chapter 4とChapter 5のタイルまわりを担当。同チャプターのビジュアルと背景の細部もまとめてくれました。
SaraJS - いろいろなビジュアルエフェクトと、難易度の高いプログラミングを担当。Chapter 4のライティング、波の表現、予言の表現なども手伝ってくれました。今は、Chapter 5のカットシーンを作ってくれています。
Andy - 3人のマイクと、ミニゲーム「ジョングラー」と「バタット」を制作してくれました。今は、Andy自身もなんだかよくわからないものを担当しています。『Knuckle Sandwich』というゲームの制作者です。
ひとこと「開発中、マイクに向かってずっと叫んでいたせいで、仕事場を別の部屋に移さないといけなくなりました」
Robert – 日本のおじさんと歴史をこよなく愛するプロデューサー。開発プロセスの中心部分には関わっていないものの、チームをまとめ、タスク管理をし、 パブリッシングの案内もしてくれる人。じつはカエルかも?
ゲストメンバー
Ondy - お料理ミニゲームの制作にゲスト参加。プラス、Chapter 5の重要なあれこれを制作。『Tres-Bashers』(他多数!)の制作者。
James - カウボーイミニゲームの制作にゲスト参加。プラス、とある「こうどう」で全員が一度にスピンしたときに発生する竜巻を作ってくれました。
????? - Chapter 5のボスの弾幕をプログラミングしてくれています!











