インタビュー:GIGI
トビー:Gigiとの“出会い”は、僕がまだ音楽制作をしてるだけのころに、知り合いでもないのにずうずうしくGigiにツイート送ったときだよね。あのころはGigiにすごくあこがれてて…まあ、今も少しそんな気持ちはあるけど、当時の僕の印象って、どんなだった?
Gigi:初めてコンベンションに出展したときのことを話してもいい?イベントホールに向かって歩いてたら、偶然近くにトビーがいて、何人かの友だちと、どのアーティストに会うのが楽しみか話してるのが聞こえたんだよね。トビーはわたしが近くにいることに気づいてて、わざとでっかい声で「GGDGに会うのが超楽しみ!!」って言って… それがリアルで初めて会ったときだったから、「あー、アイツかー…」って思った。
つまり、ヘンなヤツだと思ったってことなんだけど、わたしもたいがいヘンなヤツだったから、気が合って当然だよね。出会ったばかりのころのトビーの印象は、元気がありあまってる、恐れ知らずの小イヌ、みたいなイメージだったな。
トビー: 忘れてる人も多いけど、『UNDERTALE』は、2012年にデモ版がリリースされたのが最初だったんだよね。いせきのエリアしかなかったけど…プレイして、どんな印象だった??
Gigi:トビーがこんなの作ったことが、衝撃的だった。期待してなかったわけじゃないよ?トビーがすごい才能の持ち主だってことは知ってたから。でも、ほぼ1人でこんなにまとまりのあるゲームを作れてしまうってことが、とにかく驚きで。トビーみたいにゲームを開発する人たちと友だちになる前は、「ゲームを作る」なんて…ましてや、「おもしろいゲームを作る」なんて、1人じゃとてもできないことだと思ってた。だから、本当にびっくりした。
デモの内容については…これ、話したことあったっけ?初めてプレイしたとき、わたし、トリエルを殺しちゃって、別の結末をほのめかすヒントも完全にスルーしちゃってて、トビーも知ってるある友だちがプレイするのを見て初めて、「ああ、そういうことか!」ってわかったんだ。自分でデモをプレイした感想は「なかなかよかった」だったけど、別の結末を見て「衝撃!」に変わったよ。
トビー:Steamに上げてるこの販促用のアートも、Gigiが描いてくれたんだよね。ありがとね。
Gigi:こちらこそ。このイラストは、今でも気に入ってるよ。でも、今ならもっと短縮法をうまく使って描けただろうな。
トビー:Gigiは『UNDERTALE』のテストプレイもしてくれて、完成版のゲームが世に出る前にプレイした1人なわけだけど、やってみてどうだった?リリースされたらどうなるとか、考えた…?
Gigi:デモですでに衝撃を受けてたけど、完成版はさらに衝撃だった。ありきたりの表現だけど、こんなゲーム、他に見たことない、って思ったよ。リリースされたあとの影響まではさすがに予想できなかったけど、あのときすでに、すごいものができた、って心から思った。
それと、いまだに覚えてるのが、トビーに「ゲーム中に出てきたものの中でウザいと思ったものは?」って聞かれて、「オニオンさん」って即答したこと。
トビー:見てて思ったんだけど…Gigiって一時期、「サントリ」が推しカップルだったよね?
Gigi:なんで過去形?
トビー:たしか、GigiとChessにホテルの部屋で、『UNDERTALE』の超見せ場的なバトルを見せた覚えがあるんだけど…そのバトルを人に見せたのは、あのときが初めてだったと思うんだよね。あれって、「サンズ戦」じゃなかったっけ?2人とも、覚えてない?Chessにも聞いてみよう。Chess、ちょっと来てー。
Gigi:いろんな記憶がごっちゃになってる気がするなあ。ホテルの廊下で「ふじみのアンダイン戦」を見せてくれたことは覚えてる。誰かが足を止めて話しかけてくるたびに、あわててノートパソコン閉じなきゃいけなくて… Chessとわたしに『DELTARUNE』の序盤を見せてくれたときのことも覚えてるよ。みんなで韓国に行く前の夜だった。
「サンズ戦」でいちばん鮮明に覚えてるのは、自分でテストプレイしたときだな。わたしの腕前に合わせて少し難易度下げてくれてたと思うんだけど、Chessはわたしよりずっとうまいから、調整ナシでプレイしたんだよね。
ちなみに、ちょっと脱線するけど、初めて通しプレイしたとき、行き詰まるたびにトビーにメッセしてアドバイスを求めたんだよね。でもトビーはそのたびにすごい真剣なトーンで、「どうするのもGigi次第だよ」って返してきて。ちょっとホラー映画の主人公になった気分だった。
Chess:トビー。その話、まったく覚えてないんですけど…??「サンズ戦」を初めて見たのは、自分で通しプレイしたときで間違いないと思うけどな… たしか、テスターの中で最初にサンズを倒したのがわたしだった記憶はある…けど、だいぶ前のことだから、ホントかどうかは確かめようがないな。『UNDERTALE』の、開発中の“何か”をホテルの部屋で見せてもらった覚えはあるけど、あれは「サンズ戦」じゃなくて、なんらかの攻撃のデバッグ用デモだったよ。なんか、脚がやたらと長いクリーチャーの下を移動して、攻撃をよけなきゃいけなくて…すごい楽しかったのを覚えてる。そういえばトビー、ずっとあとになって、あの脚攻撃をミニゲームか何かにするって言ってなかったっけ…?なんか、壮大な野望を語ってた気がするんだけど… 「LEG伝説」的な…
トビー:(LEGの話は、別の号でします)
トビー:これは質問じゃないけど、僕、Gigiが描いてた『Cucumber Quest』っていうコミックのキャラクター、「Noisemaster」のファンソングを作ったことがあったんだよね(当時の僕は、ウェブコミックのBGM作るのにすごくハマってて…)。その曲に使ったフレーズが、後にメタトンのテーマにも使われることになるんだけど…
Gigiのおかげでインスピレーションがわいたから、お礼を言わせて。それと、Gigiが描いてくれたこのアート、覚えてる?
Gigi:お礼を言うのはこっちだよ!トビーが作ってくれた「Noisemaster」のテーマを初めて聞いたときは、最高にテンション上がって、何日もリピートしまくってたんだから。
それから、うん。そのアート、もちろん覚えてるよ。思うままに、自由に描いたんだ。
トビー:『UNDERTALE』をリリースしたばかりのとき、Gigiは宣伝にすごく協力してくれたよね… Gigiのウェブコミックに何か月もバナーを載せてくれたし。当時もTwitterはあったけど、インターネットの世界は今ほど大きくなかったから、あれはきっと助けになったと思う。すごく感謝してるよ。
しかも、コミックの中にも『UNDERTALE』ネタを登場させてくれたしね。登場人物が、トリエルの顔のついたスリッパをはいてるシーンなんだけど、あれから7年たった今、そのスリッパがホントにグッズ化されることになるなんて。『DELTARUNE』にも、ちょっと出てくるしね…
あのスリッパのことは、ずっと僕の頭の中にあったんだ (Fangamerの担当者へ。これを読んでたら、僕とGigiにトリエル スリッパをプレゼントしてください。あと、Chessとテミーにも)。
Gigi:今思えば、わたしなんかのウェブコミックのページに『UNDERTALE』のバナーを貼るなんてバカみたいだけど、インターネットの世界って、たった数年でほんとに様変わりしたよね!当時はただ、「友だちがすごいがんばって、こんなすごいゲーム作ったから、みんな見て!」っていう気持ちだった。
トリエルのスリッパは、わたしもぜひ欲しいです。
トビー:これも質問じゃないけど、みなさん、Gigiはメタトンのポスターも描いてくれたんですよ。
Gigi:ああ、あのポスターね!ちっちゃいピクセルアートを元に、フルサイズのイラストに描き起こすのは楽しかった!子どものころ、「ネオペット」*1 の本の表紙を描き起こして遊んだことを思い出したよ(読者のみなさんからツッコミが入らないうちに、とっとと話を先へ進めます!)。
それで思い出したけど、メタトンの部屋に飾ってある「BIIG BIBY」のポスターも、わたしにフルサイズ版作らせてくれればよかったのに。自分の部屋に飾りたかったな。
トビー:『DELTARUNE』でお気に入りのキャラは?
Gigi:スージィ。ノエルとラルセイもすごく好き。
トビー:『DELTARUNE』で、いちばん気に入らないキャラは………?
Gigi:トビーが前、生配信中に、「ルールノー・カァドーを見たある友だちの反応が最悪だったから、プレイヤーも気に入らないだろうと思った」って言ってたけど、その「ある友だち」は、わたしです。
トビー:『UNDERTALE』と『DELTARUNE』用に制作したアートで、特に印象に残ってたり、うまく描けたと思ってるものは?
Gigi: 特にうまく描けたと思うアートはみんなChapter 3だから、今は言えないな。コンセプトアートを提出するたびに、「よすぎる!」って何度言ってもらえたか…
リリース済みのものの中でいちばん気に入ってるのは、Chapter 2のサイバーシティのコンセプトアート。それから、メインキャラクターたちにふだんと違う服を着せるのも、いつもすごく楽しい。
トビー:(GigiがChapter 3のコンセプトアートを描いてくれたのはかなり初期のころで、開発が進むにつれて、実装されたアセットの多くはGigiのアートとはかなり違ったものになってしまいました… でも、Chapter 3がリリースされたら、Gigiが描いてくれたコンセプトアートも必ずみなさんにお見せします!)
トビー:『DELTARUNE』の今後のチャプターで、いちばん楽しみにしてるものは?
Gigi:前回のメルマガに載ってた開発チームのインタビューに、トビーがスクリプトの読み聞かせをしてくれたときの話が出てたよね?わたしもその読み聞かせ会に参加してて、だいたい黙って静かに聞いてたと思うんだけど、ある場面で、突然悪魔に取り憑かれたみたいに「YEAAH!」って雄叫び上げちゃって。だから、その部分かな。
トビー:他にも何か、話したいことはある?開発チームとの思い出とか、僕のゲームの開発中の話とか、開発後の話とか… ただし、みんなで韓国行ったときの話はナシね。あれはダメ…
Gigi:ああ…「Cheese Bong」*2 ね…
でも、韓国旅行の話で、1つ話したいことがある。あれは旅行最終日の夜で、みんなで泊まった宿が、床に布団が敷いてある伝統的な旅館みたいなところだったんだけど、晩ごはんはピザをデリバリーして…
そのとき、音楽制作の話になったんだよね。共有スペースのちっちゃいテーブルで、みんなでトビーのノートパソコンを囲んで、トビーはマッコリでベロベロになりながら、「MEGALOVANIA」をどんなふうにアレンジしたか、「FL Studio」*3 でデモンストレーションしてくれたじゃない?あのときは恥ずかしくて言えなかったけど、わたし、自分で音楽作ってみたいってずっと思ってて、あれを見たとき初めて、自分にもできるかもしれないって思えたんだよね。だから、いい思い出なんだ。デモを見せてくれて、ありがとね。
*1 Knowledge Adventure社が運営するバーチャルペットコミュニティーサイト
*2 韓国の魚肉ソーセージ
*3 Image-Line社開発の音楽制作ソフト
トビー:Gigi、どうもありがとうございましたあぁぁぁぁ!!!!