テミーにインタビュー!

『UNDERTALE』のこと

トビー:『UNDERTALE』を作りはじめたとき、僕はテミーのTumblrにいきなりDMを送って、手伝ってほしいってお願いしたんだよね。そしたらテミーがフツーにOKの返事をくれたから、僕がテミーをスカイプに呼んで、どんなゲームかチャットでドバーッと説明したわけだけど… もう一度言うね、あのときテミーは、フツーにOKしてくれた。それは僕にとって、ホントに、めちゃくちゃ、最高にラッキーなことだったと思う。どんな気持ちで返事をくれたの?

テミー:たぶん、トビーにとっても私にとっても、タイミングがベストだったんじゃないかな。あのころ私は、ゲームのアートを描きたい気持ちがすごく強かったんだけど、コラボのお誘いを受けることは、ほとんどなかったんだ。トビーからうれしいDMが来たことを何人かの友だちに話したら、そのうち1人が、「その人、めちゃくちゃスゴい人だよ」って教えてくれて、自分の絵がそんな人の目に止まったことがうれしくて、ちょっと舞い上がっちゃった。今思うと、なんか笑っちゃうけど… でも、いずれにしろ手伝うことにしてたと思うな。トビーの音楽を聴いた瞬間に、「はい、ぜひ!」って返事をしてたはず。当時は音楽作る人を数えるほどしか知らなくて、その人たちはみんな魔法使いに思えた。今でも、トビーはトップクラスの超優秀なコンポーザーだと思ってるし、ゲームの制作スタッフとしてトビーの音楽を聴ける私は、本当に恵まれてると思う。トビーがどれだけすごいか、つい忘れがちだけど、いつも、デモの段階でもう、聴くと感激するもん。音楽を作るって、私にとってはいまだに、特殊能力なんだよね。だから私のほうこそ、トビーから連絡もらえて本当にラッキーだったと思ってます!!

トビー:最初に僕のゲームを見たとき、どんな印象を受けた?

テミー:想像してたのよりぜんぜんすごくて、びっくりした!さっきスカイプの話が出たけど、チャットでゲームの説明をしてくれた時点では、内容をちゃんと理解するのがちょっと難しかったんだ。私はあんまり読解力が高い方じゃないと思うんだけど、ログを何度も読み返してるうちに、ちょっとずつ内容がわかってきて、そしたら、アイデアもコンセプトも、すごくいい!って思えて。で、フラウィが出てくる最初のデモを見た瞬間、「:o 」ってなった!

あのデモの、フラウィの振るまいとか、笑い方とか、とにかく最高で、当時自分がプレイしてたゲームとはぜんぜん違ってて、面食らったのを覚えてる。
あれを見て以降は特に、「このゲームは絶対、特別なものになる」って気持ちが強くなったよ。

トビー:『UNDERTALE』制作中の思い出で、特に印象に残ってるものは?

テミー:ある日、授業中に携帯に「パピルス」からメッセージが届いたときのことは、よく覚えてる。トビーはたぶん、パピルスっていうキャラクターはどんな性格なのか、アイデアを固めようとしてたんだと思うけど、何が起きてるのか理解するのに、何秒かかかったよ。でも、返信するの楽しかった!メッセージが届いて以降はまったく授業を聞いてなかった気がするけど、なんの授業だったかも思い出せないから、問題ナシ!

席に座って授業を受けるテミー。机の上のスマホ画面にはパピルスの顔が表示されている

トビー:リリースされたときの反響には、驚いた?

テミー:ものすごい数の人がプレイしてくれたことには、驚いた!でも、トビーのシナリオと音楽と演出のコンボは最強だから、私と同じように他の人たちの心にも絶対響くって、私にはわかってた気がするな。
でも、ここまで大勢の人に遊んでもらえるなんて、さすがに誰にも想像できなかったんじゃない?とはいえ、仮にごく一部の人だけが楽しんでくれる結果になってたとしても、このゲームがすごく特別だっていう事実は、変わらなかったと私は思う。

トビー:僕が『UNDERTALE』にこんなにたくさんイヌを登場させたのは、たぶん、テミーのせいだと思うんだけど…今でも、イヌ、好きだよね!?

テミー:ごめんなさい…………今は、ネコのほうが好き…………………だけど、イヌも好きだよ………………………どっちもかわいいよ……………

トビー:「アーロン」っていうキャラクターを筋肉ムキムキにしたのは、テミーにいやがらせしたかったっていうだけの理由なんだけど、今はどう?今も、筋肉ってキモいと思ってる?

テミー:筋肉の存在を認めることは、できるようになりました。

『UNDERTALE』のキャラクター、「テミー」

トビー:『UNDERTALE』に出てくるキャラクターの「テミー」のデザインは、テミーの友だちのBetty Kwongが描いたイラストが原形で、たしか…「テミー」が道を渡っているところをすごい適当に描いたラクガキみたいなものだったと記憶してるんだけど、Bettyのイラストがなかったとして、今、「テミー」の新しいキャラデザを自分で作れるとしたら…どんな感じにしたい?

テミー:Bettyがあの絵を描いてくれる前の私のアバターは、モフモフのセーターを着たウサ耳つきの自分の似顔絵か、ウサギの形をした綿ぼこりの絵だったと思う。
(※英語で綿ぼこりは “dust bunny”。直訳すると「ほこりウサギ」)

ウサギのようなキャラクター2体のスケッチ

この綿ぼこりキャラの名前はたしか、「BunnyThing(ウサギっぽい何か)」だったかな。“dust bunny”の変種、みたいな?

トビー:テミーをキャラクターとして『UNDERTALE』に登場させたのは、当時テミーのテキストチャットがすごく独特だったからなんだよね。いつもわざとヘンなスペルでタイプしたりしてて。だから、ゲーム内キャラの「テミー」のしゃべり方は、当時のテミーの、ふだんのしゃべり方をちょっと大げさにしたものだったんだけど、現実のテミーは、そのうちだんだんああいうチャットをしなくなったよね。その理由を聞きたかったんだけど…単に自然に変わっていっただけかな?今は「ホィ」じゃなくて、「おはお」って言うしね。

テミー:テキストチャットの書き方は、年月とともに自然に変わっていっただけだと思うけど、当時は元気がありあまってたから、タイピングにもそれがにじみ出てたんじゃないかな(あのころの元気が欲しい…)。

トビー:今はみんな、テミーといえば、“Temloaf”とか、かわいい自画像イラストとか、オリジナル作品を思い浮かべると思うけど、「テミー=『UNDERTALE』のキャラクターのテミー」と思われてた時期も長かったよね。キャラクターのテミーとか、『UNDERTALE』というゲーム自体と自分が結びつけられることを、どう感じてた?

テミー:最初は楽しかった!自分がそんなに注目される理由がわからなかったけど。たしかに、『UNDERTALE』のアートをたくさん描いたけど、それがそんなに大したことだとは思えなかったし…それに、私自身はゲーム内キャラじゃないし、私はトビーじゃないし…(それとも、「私=ゲーム内のテミー」だったのかな…?今となってはもう、よくわからないけど)。
そのうち、「『UNDERTALE』のテミー」としてものすごく注目されることに少し違和感を覚えるようになって、だから、自分はそれだけの注目に値する人間なんだって思えるように、もっと絵のスキルを磨いたり、小規模な自主制作プロジェクトを始めてみたりした。今では、自主制作をコツコツ進めるのがすごく楽しいから、きっかけをもらえてよかったと思ってるよ。

いろんなテミー(現実のテミー、DELTARUNEとUNDERTALEのテミー、マスコット版テミー、“Loaf Tem”)

『DELTARUNE』のこと

トビー:テミーとはもう、かれこれ10年ぐらいいっしょに仕事してるけど、改めて考えると、なんかすごいよね… そろそろイヤになってきた?

テミー:👀

トビー:『DELTARUNE』開発中のことは、僕もちょっと記憶があやふやなんだけど、Chapter 1と2の制作中のことで、何かおもしろい思い出はある?

テミー:開発初期のことを思い出そうとすると、なぜか記憶がぼんやりしてて、いつ描いたんだろう、っていうか、ホントに自分は何か描いたのかな、って感じなんだよね。自分が描いたアートを見せられて、「これはテミーが描いたものじゃない」って言われたら、フツーに信じると思う。
実際、いくつかのアセットを見て、「このアート、いいな」って思ったら、「テミーが描いたやつじゃん」って言われて、でもぜんぜん覚えがないことが何回かあったし。

トビー:『DELTARUNE』のキャラクターで、特に気に入ってるのはある?

テミー:スージィが好き!あと、ジェビルも。

アート全般のこと

トビー:テミーはすばらしいアートを描くけど、うまくなるコツってある?あと、ふだんはどんなツールを使ってる?

テミー:うれしい、ありがとう!!うまくなるのに大事なのは、観察眼だと思う。自分がいいなと思うものを、どうしていいと思うのか考えてみる。そうすると、作品を通して自分の表現ができるようになるよ。それプラス、基礎の勉強も大事。実物を見て写生したり、人体の構造を理解したり。身の回りの物をいろいろ見ること自体楽しくなるし、いいなと思ったものを、どうしてそう思ったのか、じっくり観察してみるのも楽しくなるよ。たとえば、真っ赤なブランケットに強い日差しが当たって、部屋の中まで赤く染まる様子とか… 前に、そういう光景を見て、いいなと思ったことがあったんだよね。日頃からそうやっていろんなものを吸収してると、作品にもそれが出て、うまく形にできるようになるよ。

ツールは、グラフィックス制作には、WacomのIntuosタブレットと、ソフトはKritaを使ってます。アニメーション制作には、Adobe AnimateとAfter Effects。ピクセルアートは、GraphicsGaleで描いてます。iPadでProcreateを使って描いたり、スマホのメモ帳アプリで描くこともあるよ。

『ファイナルファンタジーXIV』のこと

トビー:テミーからはしょっちゅう『ファイナルファンタジーXIV』をプレイしろって言われるけど、何がそんなにおすすめなのか、1行で説明して。

テミー:クールなドラゴンとホットな騎士と、形が変わる玉が出てくる56人レイド。

トビー:テミーのお気に入りキャラクターは?(言われてもぜんぜんわかんないけど)

テミー:エスティニアン :3

『ファイナルファンタジーXIV』のオズマに杖を向けるテミー

その他

トビー:ゲーム制作に関係ない、僕とのおもしろエピソード、あったら教えて。

テミー:トビーといっしょにカラオケ行くようになって、私も勇気出して歌ってみるようになって、そしたら…「テミーも歌える…かも…(ちょっとなら)」ってわかったこと。

トビー:それではここで、テミーの他の作品もご紹介します!みなさん、知ってましたか?僕とカメリアさんとテミーのコラボ曲が、テミーが作ったアドベンチャーゲームのBGMに使われてるんですよ?
それから、テミーは現在WEBコミックも制作中で、チャプター5まで公開されてます!

テミー:(質問に答えるコーナーなのに、宣伝もさせてもらえるんだ…) ありがとう!!こうして自分が作ったものを並べてみると、なんともいえない達成感があるよね!トビーとカメリアさんが私のささやかなゲームに提供してくれた曲は、今でもお気に入りです。2人の曲が最高すぎて、私なんかの作品にはもったいなすぎ!

WEBコミック制作も、すっごくやりがいがあります!ずっとマンガを描きたいと思ってたけど、ここまで形にできたのは初めてで… がんばってきてよかったです!!
最近よく見る夢があって、このコミックが紙の本になって、私はそのページをめくりながら幸せに浸ってる夢なんですけど、次のチャプターが完成したら、ホントにやってみようかなと思ってます。そのうち、このマンガをベースにちょっとしたアニメーションも作ろうと考えてるし、物語が完結したら、シンプルな短編ゲームにもしてみようかな!

テミーの作品